理事長所信

【はじめに】

私は2009年に飲食店を開業し、独立しました。開業当初は、全ての運営を一人でこなすつもりでした。当時の私は若く、自分の力が全てだと過信し、半年以上休むことなく働き続けていました。しかし、7ヶ月目を迎えたある日、アルバイトのスタッフが私にこう言ってくれました。「店⻑、そろそろお休みを作ったらどうですか?僕たちは厨房もドリンクもお会計もこなし、日報も毎日書いているじゃないですか。僕たちを信用して、休んでください。」その瞬間、私は気付かされたのです。組織とは決して一人で運営できるものではなく、仲間を信頼し共に努力することで、さらに大きな成⻑ができるのだと。このスタッフのおかげで、私自身も大きく成⻑することができました。

皆さんも似たような経験があるのではないでしょうか。目標を設定して成功体験を積んだ時、周囲の人に認められたり励まされた時、新たな挑戦にワクワクした時など、自分の「スイッチ」が入る瞬間はそれぞれ違います。しかし、その瞬間には決意や覚悟、挑戦への期待と不安が入り混じった、特別な感情が湧き上がっているのではないでしょうか。

私も⻘年会議所において、同じような経験をしています。2016年に先輩の勧めで入会しましたが、最初は熱心に活動していたわけではありません。それでも、地域や社会のために全力で取り組む先輩方が、私に対しても常に声をかけてくれました。プライベートな誘いも増え、共に過ごす時間の中で、先輩方が楽しそうに⻘年会議所の話をする姿を見て、自然と私も仲間の一員として立ちあがるようになりました。

⻘年会議所には「修練」「奉仕」「友情」という「三信条」があります。苦楽を共にし、無償で社会に尽くし、そこから一生の友情が生まれる。まさにこの言葉通り、私は入会以来、⻘年会議所の運動を通じて多くの仲間と出会うことができました。この経験は私にとって、かけがえのない財産です。地域や社会のために行動し、一人ひとりがそれぞれの考え方で成⻑し、人生がより豊かになる。そんな素晴らしい⻘年会議所の運動を、未来のつくばのために全力で展開していきます。

【未来を創るための人財発掘】

設立以来、諸先輩方から受け継いだLOMのバトンを繋ぎ続けるためには、運動の原動力となる人財の発掘が非常に重要です。現在、全国的に会員数は減少傾向にありますが、人口増加率が全国1位であるつくば市の地の利をいかし、同じ志を持った仲間を積極的に発掘していくことが必要です。会員数が増えることで、LOMとしての規模が大きくなり、地域の未来を創る運動を展開していくことができます。

⻘年会議所には「明るい豊かな社会の実現」という共通の理念があります。この理念は、時代や社会情勢に応じて常に変化していくものとされており、私たち20~40歳のリーダーとなる世代が「幸せになれる社会とは何か」を考え、その社会の実現を目指すものです。少し難しい内容ですが、私は「自由な発想の中で、幸せな社会に向けた運動を仲間と共に創り上げる」というものだと捉えています。

人財発掘においては、多様な背景を持つ人財を組織に迎え入れることが重要です。人間の柔軟な思考や感情に基づく判断には、経験、直感、共感といった複雑な要素が絡みます。どんなに技術が進化しても、AIでは判断しきれない部分を人間は担うことができ、それが持続可能な組織を築くために不可欠です。だからこそ、人財の発掘が組織の成⻑には欠かせないのです。2024年度から始まった異業種交流会では、ビジネスマッチングや若手同士の問題解決に向けた交流を通じて、成⻑を実感できる機会を提供し、その結果、入会希望者が増加しています。引き続き、会員数100名以上を目指し、多様な手法を活用しながら、メンバー全員で人財発掘に努めていきましょう。

⻘年会議所の理念を理解し、メンバー同士の仲間意識を育み、運動を真剣に取り組む姿勢があれば、入会候補者も自然に入会を希望するようになります。

【アカデミーメンバーが活躍できる環境の構築】

2025年度のつくば⻘年会議所は、期首で約80名のメンバーを擁しており、そのうち半数近くが入会して3年未満のアカデミーメンバーです。この経験が浅いメンバーの成⻑こそが、LOM全体の発展に直結していくと確信しています。

まず、LOMとしてアカデミーメンバーを迎え入れるための体制が重要です。希望を抱いて入会したメンバーが、熱意を失う前にしっかりとフォローアップできる体制を構築します。各委員会がチームとしての一体感を醸成し、小さな成功体験を積ませるためのサポートを行います。委員⻑や副委員⻑が積極的にコミュニケーションを図り、信頼関係を築くとともに、目標と役割を明確にし、進捗を確認することで、アカデミーメンバーが自信を持ち、積極的に行動できるようにしていきます。

また、アカデミー事業として、段階的な学習と実践的なトレーニングの場を提供することが重要です。さらに、アカデミー以外のメンバーも育成に積極的に関わることで、運動のあり方を再認識する機会となります。メンバー同士が同じ時間を共有し、楽しみながら⻘年会議所の理念に共感できる場を提供していくことが大切です。

組織力向上と地域貢献のための基盤をつくるアカデミー教育を進めていくことで、アカデミーメンバーが自信を持って運動に取り組むようになり、LOM全体の成⻑に繋がります。

【まちの魅力と笑顔や感動を届ける事業の開催】

つくばには、日本百名山に選ばれる筑波山や緑ゆたかな環境と最新の試験設備を備えたJAXA筑波宇宙センターなど、地域の魅力が数多く存在します。さらに、1963年に「研究学園都市建設」が閣議了解され、1985年には国際博覧会を開催し、様々な企業、国の研究・教育機関が集積する科学拠点として世界に広く周知されるようになりました。そして、2005年には、つくばエクスプレスが開通し、沿線の市街地整備に伴い、多くの子育て世代を中心に転入者が増えており、近年では珍しく人口増加が著しいまちです。

しかし、人口増加とともに都市部への集中が進み、SNSやインターネットの普及によってオンラインでのコミュニケーションが主流になる一方で、県内外からの観光客数は伸び悩んでいます。これにより、人と人とのつながりが希薄になり、地域の魅力が十分に伝わりにくくなっています。また、つくば市では夏に「まつりつくば」が開催され、市⺠同士が交流する場となっていますが、冬の時期には新しく転入してきた市⺠が地域に溶け込むための交流の場が不足しています。

私たち⻘年会議所は、地域の魅力を県内外に発信し、市⺠同士の交流を深めることを目的に、様々な団体と協力しながら、地域の魅力を最大限に発揮する事業を開催します。この事業を通じて、訪れる方々や市⺠がつくばの魅力や特別な体験を楽しむことができ、人と人とのつながりが生まれるとともに、幅広い層に地域の魅力をアピールする貴重な機会となります。

⻘年会議所という組織を通じて、まちの魅力を最大限に引き出し、多くの人々を呼び込みましょう。そして、訪れた人たちに交流の場を提供していきます。地域と人を繋げることがまちの魅力発信に寄与すると確信しております。笑顔と感動を届ける素晴らしい事業を開催しましょう。

【地域の結束と歴史や伝統を未来へ繋ぐために】

「まつりつくば」は、毎年 8 ⽉下旬に開催されるつくば市最⼤級のイベントです。つくば⻘年会議所としても、 ⻑年続く「ねぶたパレード」という⼤きな事業を担っています。これは、当時の諸先輩⽅や歴代の実⾏委員⻑たちが、 何度も⻘森へ⾜を運び、つくば市⺠の笑顔のために熱い想いを伝え続け、 理解と協⼒を得て継続してきた、地域の伝統的な事業です。 「The祭 in TSUKUBA ねぶたパレード 2024」も、ウィズコロナからアフターコロナへと移⾏する世界の中で、多くの市⺠の参加を得て⼤盛況のうちに終了しました。

この事業を通じて、毎年感じるのは、市⺠の皆様はもちろん、行政や他団体、諸先輩方との連携があってこそ、このパレードが成り立っているということです。そして、地域の繋がりが強まり、⻘年会議所メンバーが心を一つにすることができる重要な事業だということも再確認しています。

しかし、ここで一つの問いが浮かびます。⻘年会議所の役割は、単に事業を継続することでしょうか。効率化を図りつつ、常に新しい手法を模索し、行政や協力団体との調整を進め、さらに地域に必要とされる事業へと発展させる必要があるのです。

「ねぶたパレード」は、単なるイベント以上の意義を持っています。地域に深く根ざしたこの事業は、市⺠に喜びと誇りを提供すると同時に、地域コミュニティの絆を強化し、まち全体の活性化にも貢献しています。参加者や観客は、ねぶたの迫力や美しさに感動するだけでなく、地域全体が一体となることで、まちへの愛着が深まります。

我々⻘年会議所は、この絆の温かさを感じてもらえるような事業の開催を目指しながら、地域の未来を見据えたLOMの運動を発信していきます。つくばのまちがより豊かで活気に満ちた未来を迎えられるよう、全力で取り組んでまいります。

【国際的な視野を広げるための⻘少年育成】

子どもたちが世界に目を向けるためには、過去の歴史について学び、過ちを繰り返さないための教訓を理解することが重要です。争いごとは国家間の対立やイデオロギーの違い、資源の奪い合いなど、さまざまな要因で引き起こされました。我々の地域にも戦跡が残っており、子どもたちがその歴史的背景を理解することは不可欠です。また、時代と共に歴史の語り手が減少していく中、世界唯一の被爆国として、戦争の悲惨さを伝え続ける責務があります。こうした教育は、子どもたちに争いを繰り返さないための知恵と共感力を養う大切な投資です。

さらに、現代の国際情勢や現在も続く紛争についても学ぶことが重要です。グローバル化が進む中で、相互理解と対話が対立を避ける鍵となります。他者の立場を理解し、異なる意見に寛容に向き合う力を育むことで、子どもたちは未来の国際的なリーダーとして成⻑します。

つくば市では、科学技術と教育の先進地として、これらを活用した⻘少年育成が可能です。争いの原因や影響を科学的に分析し、子どもたちに伝えることで、より深い理解を促すことができます。また、つくば市周辺に残る戦跡を学び、地域が受けた影響を考察することによって、国際的な視野を広げる機会を提供します。

国際的な視野を広げるためには、継続的な努力が必要です。子どもたちが自らの行動や選択がどのように国際社会に貢献するかを理解し、日常生活の中でそれを実践できるような教育が求められています。これこそ、未来のグローバルな社会を築き、国際的なリーダーを育てるための真の⻘少年教育です。

【環境美化の意識を高め、持続可能な取り組み方を普及させるために】

つくば⻘年会議所は、地域社会のリーダーとして、さまざまな団体と協力しながら、豊かなつくばの恵みを未来へ引き継ぐための運動に積極的に取り組むことが求められています。自然や資源を次世代に引き継ぐため、私たちは運動を進めていかなければなりません。

引き続き、つくば市の「きれいなまちづくり実行委員会」と協力し、環境美化の意識を広めるための「きれいきれい大作戦」を継続していきます。しかし、ゴミ拾いや落書き消しだけでは、持続可能な環境問題への取り組みを広めるには不十分です。新たな手法を模索しながら、きれいで住み良いまちづくりに貢献するための気付きを与え、運動を展開するためのコミュニティを広げていきましょう。

また、つくば市には環境基本計画があり、毎年新たな取り組みが進められているものの、目標が未達成の部分も少なくありません。さらに、企業や市⺠の環境保全への参加意識の低下も課題です。私たち⻘年会議所は、このような課題を解決するために積極的に行動し、持続可能な社会の実現を目指すべきです。

持続可能という観点では、将来を見据え、地域の子どもたちが環境問題を考え、行動できるような事業を開催し、次世代に環境保全の意識を根付かせることを目指します。これらの取り組みを通じ、つくば⻘年会議所は地域社会でリーダーシップを発揮し、持続可能な未来に向けた環境美化運動を推進していきます。

【諸大会の開催が可能なLOMへ】

現在、つくば地域は自然環境や学術都市としての強みを持ちながらも、その魅力が十分に発信されておらず、県外からの認知度はまだ低い状況です。このような地域の魅力を広く発信するためにも、つくば⻘年会議所が全国規模の大会を主管し、全国から多くの参加者を集めることで、地域経済の活性化や知名度の向上に繋げていきましょう。また、大会の準備や運営を通じて、次世代のリーダーを育成することが可能です。若手メンバーは、大規模プロジェクトの中で貴重な経験を積み、社会で活躍するためのスキルを身につけることができます。このような実践的な学びの場を提供することは、つくば⻘年会議所の大きな使命の一つです。次に、つくば市のブランド力向上にも繋がります。大会が成功すれば、「大会の地」としての評価が高まり、今後の観光やビジネス誘致にも大きな効果が期待されます。全国大会の主管には多大な努力が必要ですが、得られる成果は地域社会全体にとって非常に価値があるものです。さらに、大会を成功裏に収めることで、つくば⻘年会議所のリーダーシップが地域内外で認知され、地域全体の結束力や信頼感が高まります。このような経験は、今後の私たちの運動が全国、さらには世界規模の運動へと発展していく基盤にもなるでしょう。

我々つくば⻘年会議所は、「2024年度日本JCじゃがいもクラブ第51回東日本地区大会」を大成功に導くことができました。つくば⻘年会議所のOB・OGの皆様とは、毎年の事業やオリエンテーションを通じて連携を強化してきましたが、この事業を通じてさらに強固な関係を築くことができました。また、LOMとしても若手メンバーの成⻑が著しく、近年では会員数の純増を続けており、茨城ブロックを代表する組織へと成⻑していることを確信しております。そんな私たちは今、地域の成⻑と発展、そして住⺠の誇りや結束力をさらに高めるため、新たな目標を掲げるべき時期に来ています。つくば地域を次のステージへと導くためには、私たち自身の力が必要です。つくば⻘年会議所が全国大会を主管することの意義は非常に大きく、地域活性化に向けた重要な一歩となります。

来るべき全国大会開催の年に向け、メンバーの参加意欲をさらに高めるとともに、諸先輩方との協力体制を一層強化していきましょう。つくば⻘年会議所総意のもと、目標達成に向けた明確なロードマップを描いていきます。

【柔軟かつ革新的な組織の運営】

つくば⻘年会議所の50周年ビジョンには、「まちの未来を明るい豊かな社会へと導くために、メンバーの成⻑と独創性を生かし、時代に即した新たな価値を創出する存在であるべき」と、記されています。このビジョンに向け運動を展開するためには、力強い組織の運営力が必要です。メンバーが率先して新たな革新を創造し、柔軟な適応力を持てる組織体制を整えていきます。

まずは、時代と共に変化をし続ける情報源に対応することが重要です。運動の発信だけではなく、インフルエンサーとの協力やAIを活用したデータ分析などで求められた情報をダイレクトに伝えていく必要があります。運動を継続的に展開していくには地域に賛同をいただくことや、人財の発掘が必要不可欠です。我々の運動に興味を持っていただけるよう、戦略的広報を実施してまいります。

次に、財政面においては、透明性ある健全な財務運営は当然のことながら、収入と支出を詳細に追跡し、無駄な支出の削減や突発的なリスクにも柔軟に対応できるよう、管理体制を構築することが求められます。適正な予算配分とその必要性にも重点を置きながら、収入面でもクラウドファンディングなどの外部資金調達サポートを含め、持続可能な財務運営を行ってまいります。引き続き、広報、財務面における財務広報審査会議を実施して、力強い組織の運営力を身につけていきます。

さらに、必ず訪れる危機に向け対応をする必要があります。つくば⻘年会議所は、つくば学園ロータリークラブ・つくばOAKライオンズクラブと災害時における救援相互協定を結んでおります。昨今では、地球温暖化による気候変動、TX沿線の都市化などに伴い、自然災害の種類や影響も変化しております。時代に合わせた災害支援対策が必要で、3団体による救援相互協定の再構築についても協議を進めてまいります。

⻘年会議所は世界中に広がる国際的なネットワークを持つ団体です。つくばの垣根を超えて、より広い地域の課題に取り組むことで、たくさんの成⻑の機会を得ることができる組織です。つくばの未来を創るためにも、出向の機会を積極的に活用できる環境を整え、組織力の向上へ繋げていきましょう。出向をするメンバーに対するサポートと、その活躍をメンバーに共有し身近に感じてもらえる運営を目指します。

そして、家族や会社に誇れるLOMを目指します。誠実な姿勢で透明性を持って運動を続けることで信頼される組織が築けるはずです。⻘年経済人として社会貢献を推進し、理念の達成に向け挑戦を続けることで、関わるすべての人が安心できる組織になります。

【結びに】

⻘年会議所という組織には想像を超えるパワーが存在します。この組織を利用することで、一人ではできないような大きな事業を運営することができます。様々な研修プログラムに参加することで、企業や地域のリーダーとしての能力を得ることができます。つくばの垣根を超えて日本中、世界中にネットワークを広げることができます。一生付き合える最高の仲間に出会うことができます。このように、あなたの夢を実現させる舞台がたくさん用意されているのです。

私たちは、特に困難な状況や大きな挑戦に直面したときこそ、変化や進歩を恐れてはいけません。ただ座っているだけでは何も変わりません。もちろん、行動には失敗がつきものですが、その失敗こそが危機をチャンスに変え、成功への一歩となる力を与えてくれるのです。思い立ったその瞬間こそ、行動を起こすべき絶好の機会なのです。

2025年度の大きな目標や改革、挑戦に向けて士気を高め、未来を切り開くには、全員が一体となり、今、この瞬間に立ち上がる必要があるのです。

未来のつくばを創るために、さぁ立ちあがろう。今だ!


一般社団法人つくば⻘年会議所
第 43 代理事⻑ ⻫藤 淳一