はじめに
皆さんは自信を持った行動や振る舞いができるとき、どのような顔をしているでしょうか。きっと希望に満ち溢れた明るい表情でいると思います。「自信」の意味を辞書で調べると以下のように記載されています。自分で自分の能力や価値などを信じること。自分の考えや行動が正しいと信じて疑わないこと。
私は、昔から自分に自信が持てませんでした。どこか控え目で、自分はこれくらいでいいや。失敗して笑われたくない。そんな気持ちで日常を過ごしていました。会社員から独立し自分で事業を行うようになり、人脈を増やして事業を拡大していきたいと思っている頃に、近所の先輩のお誘いでつくば青年会議所に入会しました。当初は、付き合い程度に40歳まで上手くこなしながら人脈を増やしていこう。そんな軽い気持ちで過ごしていました。しかし、JC活動に参加する中で、諸先輩方やメンバーが共に汗をかき、真剣に地域のために活動する姿を見て、私の背中のスイッチを押されたような気がしました。 自分にも何かできるのではないか。失敗しても仲間が支えてくれる。人は人によって磨かれると言いますが、青年会議所はまさしくそれを感じることができる場所だと思います。たくさんの成長の機会があり、地域のため、他人のために行動することで自分が成長できる。成長を実感できるからこそ自信を持った行動につながる。そんなつくば青年会議所の運動をメンバーと共に進めて参ります。
おもてなしの心をつくばで
つくば青年会議所は1983年に設立されてから多くの諸先輩方の努力により、今日まで紡がれてきました。その努力の中にはつくばだけでなく、日本全国の青年会議所の連絡調整機関である日本青年会議所への出向によるご活躍も今日のメンバーに脈々と受け継がれております。公益社団法人日本青年会議所は、日本国内のJC運動を支援し、青年たちのリーダーシップの向上、社会貢献活動の推進を行っています。私たちつくば青年会議所もたくさんの支援をいただいてきました。このように私たち青年会議所は様々な支援の上で活動をしております。日本青年会議所もたくさんの企業、団体に支援されておりその中の一つとして日本JCじゃがいもクラブがあります。日本JCじゃがいもクラブは1954年に発足、そして1958年に日本青年会議所の分科団体として公認されました。六十数年経た現在もゴルフというスポーツを通じて、青年会議所を卒業しても「友情と修練」の場であることを忘れず、「現役とOBの架け橋であること」を基軸として全国約160LOMの方々が活動しております。つくば青年会議所は近年、2017年に第65回関東地区大会つくば大会、2022年につくば青年会議所創立40周年を迎え、2023年茨城ブロック大会つくば大会を主管しました。県内、県外のLOMを対象にした事業を開催することで、経験による成長の機会を得ることができました。2024年は「日本JCじゃがいもクラブ東日本地区大会」を主管いたします。これまでつくば青年会議所がお世話になった日本青年会議所を始めとする全国の諸先輩方、メンバーへおもてなしの心でお迎えし、つくばの魅力を発信して参ります。メンバー一丸となり事業を成功へ導き、さらなるLOMの成長につなげていきましょう。
人は宝なり
これまでつくば青年会議所は明るい豊かな社会の実現に向け、熱い運動を展開してきました。その原動力となってきたのが「人」です。一人ではできないことも多くの仲間がいれば実現ができます。しかしながら近年全国的に会員の減少が課題として挙げられています。継続的な会員の減少は、明るい豊かな社会の実現の遂行を困難なものにしてしまいます。そのため明るい豊かな社会を実現するための運動展開と会員拡大は両輪であることを再認識する必要があります。つくば市は2023年に人口25万人、市内人口増加率前年比2.30%であり、全国で一番の人口増加率と発表されました。おそらくつくば青年会議所の存在を知らない方はまだまだたくさんいるはずです。まずは、私たちの運動を多くの方に広く周知することが必要です。SNS等で周知することはもちろんですが、つくばをより良い街にしたいと思っている団体のリーダーたちと手を取り合いながら同じ志を持つ仲間を増やすことが大きなムーブメントとなり、私たちの運動に共感いただくことにつながります。組織としての存在意義を強めながら、メンバー全員で会員拡大に取り組んで参ります。 また、会員が入会後のフォローも重要です。つくば青年会議所のメンバーの4割近くが入会3年未満のいわゆるアカデミーメンバーで構成されています。会員拡大がいかに成功しても、入会後の育成に失敗してしまうと青年会議所の良さが十分に理解できないまま退会者が出てしまうという事態にもつながってしまいます。そのためには入会後からしっかりとサポートする体制が必要です。まず、青年会議所とはどのような組織なのかについて学ぶことが必要です。アカデミーメンバーが青年会議所を知るためには、身近に活躍しているメンバーの経験を近くで学ぶことが自分自身のJC生活をどのようにデザインしていくべきかのヒントにつながります。あのメンバーのように自分も成長したいと思い行動までつなげることが重要です。また、アカデミー以外のメンバーも積極的に育成に関わることが必要です。なぜなら、これまで諸先輩方から紡いできたLOMの伝統、歴史を伝えていく責任があるからです。LOM全体でアカデミーメンバーの育成に関わることがLOMとしての成長を内側から強固なものにしていきます。そして成長とは「責任の中での達成感」から来るものと考えます。学んだことやメンバーそれぞれのフィルターを通して感じた想いを事業という形でアウトプットし体感してもらい、JC活動のすばらしさに共感し、JCという共通言語でお互い切磋琢磨しながら大きく成長していきましょう。
スポーツを通して地域の魅力を
つくばエクスプレス開通以来、TX沿線開発地域であるつくば中心部は顕著な発展をしています。しかしながら周辺市街地域においては人口減少や少子高齢化が進む地域もあり、「ヒト」、「モノ」、「カネ」の流れがつくば周辺市街地よりもつくば中心部に集まる傾向にあります。そのような現象が進むとこれまでの地域の伝統、歴史などの魅力が薄れてしまう可能性が考えられます。つくば中心部から周辺市街地をつなぎ、地域の魅力を多くの方に触れていただくことが必要です。つくば青年会議所では2021年、2022年に「つくば駅伝」を開催しました。地域と地域を襷でつなぎ、地域の魅力を再認識していただきました。2024年度も「つくば駅伝」を開催し、その魅力をさらに引き出すとともに、持続的になるような検証を行って参ります。 つくば市では2023年3月に廃校をBMXコースに整備し、筑波山の新たな魅力を発見する入口として「筑波山ゲートパーク」が完成しました。これらは廃校の有効活用と、地域振興、環境に優しく持続可能な社会の構築につながります。一見不要に思われる資源も見方を変えると新たな魅力に変わります。そのような視点を持つことで、地域の魅力をさらに輝かせ、「ヒト」、「モノ」、「カネ」の流れをつくば中心部から周辺市街地へ循環させる運動を進めて参ります。
市民参加型の街づくり
2023年8月に4年ぶりとなる「まつりつくば2023」が開催されました。来場者は約50万人を記録し、つくばの夏の風物詩のひとつとして多くの方から愛されております。まつりつくばのコンセプトは自然・歴史・科学があふれる国際都市つくばで、街とひとが一体となって未来をつくることと記載されています。まさしく地域内の人のつながりを深め、つくばを活性化する事業だと思います。つくば青年会議所もまつりつくばにおいて「The祭inTSUKUBAねぶたパレード2023」を開催し、活気に満ち溢れた街の賑わいを創出することができました。市民の皆さまはもちろん、行政、パートナー、諸先輩方のご協力があってこそ成り立つ事業になります。
事業を継続することで市民の笑顔を咲かせることはできますが、全国的に伝統行事や祭りが少子高齢化や価値観の変化により減少しているのも事実です。また、近年のエンターテイメントはレストランのようにお金を払ってサービスを受けるだけでなく、バーベキューのように自らが準備をして焼いて食べるというような体験に価値を感じ、準備や設営などにお金を払って参加をする「体験型」へ変化している背景も考慮しておく必要があります。2024年度はクラウドファンディングという手法でより広範囲への周知と、体験を中心とした広報活動を行って参ります。例年の開催を踏まえつつ、どのようにしたらより多くの方がつくば市だけでなく日本全国、そして世界各国からつくば市を訪れ、よりつくばを好きになって貰えるかを考え、共に長年脈々と紡がれてきた伝統を継承していけるよう進めて参ります。
これからを生きる子供たちへ
現在の世の中はVUCA時代と呼ばれ先行きが不透明で未来の予測が不可能な状態を意味しています。また、AIなどの技術やデジタル化など、これからの時代を生き抜くためにはそれらに適応していかなければなりません。私たちはもちろんですが、これからの未来を創る子供たちこそ、自ら問題を解決し時代を生き抜くためには様々な能力が必要です。
つくば青年会議所では50周年ビジョンとして「時代に必要とされる能力と精神を兼ね備えた人材が溢れるつくばへ」「柔軟性や独創性を持った青少年たち、その次世代の核となる人財が楽しみながら修練・奉仕・友情を体現することで時代に即し、世界で活躍する人財を構築する」と掲げております。人と人のつながりから新たな価値観に触れ、心を育むことも必要です。
また、VUCA時代に適応するためには国際的な視野を持ち、異なるバックグラウンドに対する理解を深めることも大切です。なぜなら、VUCA時代は非常に複雑で相互依存した状況を特徴としており、出来事や決定は国境を越えて影響を及ぼし、国際的な連携が必要不可欠だからです。つくば市には市の人口の約4.8パーセントの約12,000人の外国人が住み暮らしており、国際的な視野を持ちやすい環境にあります。この環境を活かし、子供たちが世界を舞台にリーダーとして活躍するために必要な考え方や価値観を育んで参ります。
環境問題をより身近に
つくば青年会議所が環境問題に取り組む理由として主に二つの責任があると思います。まず一つは将来世代への責任です。環境問題は将来世代に直接影響を及ぼし、持続可能な環境を守り、改善することは私たち現役世代の責任だからです。また、私たちは地域社会に貢献する役割を果たしており、地域の環境を改善することは私たちの社会的責任だと考えます。これら二つの責任を土台にわたしたちは運動を進めていかなければいけません。ごみを拾ったり、落書きを消したりして景観を良くすることも非常に大切ですが、持続可能な社会を作るためには一人ひとりが継続して環境問題に対して実践、行動できる仕組みづくりが必要です。2021年につくば青年会議所ではSDGsパートナーの団体会員として登録をしております。つくば市きれいなまちづくり実行委員会との連携と、共に同じゴールを目指すSDGsパートナー企業を巻き込みながら、企業目線で継続的に続けられるような環境美化運動を行って参ります。 また、近年シェアリングエコノミーのサービスが定着し資源の効率的な利用、モビリティの最適化など環境問題と身近に関わっています。それらが普段の生活に浸透し、意識することなく環境問題と向き合えるようになれば、結果として環境問題を自分ごととして考える人を増やすことにつながります。普段の生活がより環境問題を身近に考えられるような運動展開も進めて参ります。
強固な組織運営
つくば青年会議所は地域の持続可能な発展のために運動を展開しています。その運動を継続的に進めていくために必要なのが強固な組織運営です。地域に向けた運動と、その運動を堅実に進めるための組織運営。すなわち、対外と対内の両軸をしっかりと固めていくことが必要です。
まず広報面においては、各種SNS、ホームページなどを活用し、私たちの運動や事業を広く発信していきます。ただ発信するだけではなく、誰に何のために伝えたいのかを考えながら発信する必要があります。また、興味を持ってもらうためには、事業だけでなく「人」に興味を持ってもらえるようなブランディングも進めて参ります。
次に財務面においては、引き続き透明性ある健全な財務運営を図り、時代にあった価値観を見極め適切な事業費配分を行って参ります。また、予算内で事業を展開するだけでなく、外部資金調達のサポートも積極的に行い、地域への効果を最大限にできるよう取り組んで参ります。この両軸を盤石なものにするために財務広報審査会議を開催し、より強固な組織運営を目指します。予算面での費用対効果と広報面でのスケジュールと媒体の適当性について毎月審査を行うことで、事業の質を高めた運動展開につながります。また、つくば青年会議所は行政や関係諸団体の皆様と災害時における支援活動に関する協定を結んでおります。関係諸団体と連携を図り常日頃から災害に備え、大規模な自然災害が起こった際の迅速な行動が行える組織体制を構築します。
さらに、育児世代であるメンバーが家庭や仕事、JC活動を並行しながらも活躍できる子育て支援等を積極的に行なうLOMを指します。様々なライフステージにあるLOMメンバーが活躍できる組織環境の構築を通じて、誰もが活躍できる社会の実現を目指します。
青年会議所には出向制度があります。茨城から世界まで幅広い範囲で多くの成長の機会があります。出向の機会を通じたメンバーの成長はつくばの明るい未来をつくる上で、大きな力となります。メンバーの皆さまには出向の機会を大いに活用いただき、新しい人間関係を見つけ自分の可能性を大きく広げ、そこから得られた経験をLOMに還元していただくことで、つくば青年会議所のさらなるレベルアップとそれぞれのメンバーの成長につながります。いつ誰がどこでどんなことをしているのかについてもメンバー全員に共有し、出向を身近に感じてもらうことも行って参ります。
結びに
青年会議所は単年度制です。すなわち毎年見る景色が違います。自分のビジネスにおいて毎年違う役職を担うことは現実的ではありません。なぜ、単年度制なのでしょうか。それはJCI MISSIONにあるようにリーダーシップの開発と成長の機会が提供されているからです。おそらく、まだ見ぬ景色はワクワクよりも不安が多いかもしれません。でもその不安は自分だけではありません。志を同じにする仲間たちも同時にそれぞれの階段を登っています。さあ、顔を上げて勇気を持って登ってみませんか。きっと登り切った先に見える景色はあなたの不安を自信に変えてくれるはずです。
一般社団法人つくば青年会議所
第42代理事長 大林 芳博