理事長所信

はじめに

 人が思いがけない変化を遂げることを「化ける」「大化けする」などと言いますが、青年会議所に入って身近な仲間が化けていった姿を幾度となく目にしてきました。ある仲間は、生真面目であまり目立ちませんでしたが、ある日を境にLOMのムードメーカーに化けました。また、ある仲間は、お調子者で時間にルーズなところがありましたが、今ではメンバーの性格や長所をうまく生かして事業を進めるリーダーに化けました。さらに、ある仲間は、入会当初はあまりLOMに姿を見せていませんでしたが、今では多くのメンバーを巻き込み、そして誰よりもメンバーを気にかけ叱咤激励をし、時には先頭に立って困難に立ち向かっていく人へと大化けしました。青年会議所に入れば自動的に化けるというわけではなく何かのきっかけで人は化けるのだと思います。その何かは人それぞれです。大きな事業のリーダーを任されたことがきっかけという人もいるでしょう。仲間と多くの時間を過ごし難しい事業を共にやり遂げたことがきっかけだという人もいるでしょう。LOMや出向先で尊敬できる人と出会ったことがきっかけだという人もいるでしょう。このように青年会議所には思いがけない変化を遂げるきっかけが多く用意されています。それは時として、自分で知らず知らずのうちに作ってしまった限界を飛び越える力をプラスしてくれる可能性、飛躍的な成長を促す可能性を秘めています。そして、強い想いを持って行動をする仲間が互いに相手を認め合い、団結をすることで生み出される力は計り知れません。昨日までの常識が明日には非常識になるかもしれないこの不確実な時代だからこそ、飛躍的な成長が、強い団結が、あなたの、もしくは誰かの不安を希望に変えるでしょう。希望溢れる未来を実現する街を目指して、つくば青年会議所の運動を力強く進めてまいります。

次なる10年後を見据えた第一歩を刻む

 つくば市は、筑波研究学園都市の建設を背景として、複数の市町村が合併をして形成された街です。1985年には、科学万博が開催され、研究機関等の集積する科学拠点としてのつくばを世界に広く周知することになりました。2005年には、つくばエクスプレスが開業し、沿線の市街地整備に伴い、今もなお子育て世代を中心とする多くの人が転入しています。そして、2022年には、地域のデジタル化と規制改革を行うことにより、DX(デジタルトランスフォーメーション)を進め幅広い分野で未来社会の先行的な実現を目指すという「スーパーシティ」の指定を国から受けています。
 つくば青年会議所は、1983年に筑波学園青年会議所として設立されてから40年間、地域の課題に取り組み、仲間と切磋琢磨する中で、個々が成長し、地域とのつながりを深めて団結し、そして、つくばの未来に思いをはせて街づくりに邁進してまいりました。創始の精神をつないできた諸先輩方の不断の努力により、今のつくば青年会議所があります。
 そして、昨年は、諸先輩方への想いと関係各位への感謝を形に表す40周年記念式典を開催しました。式典の中では、若いメンバーを中心として、「50周年ビジョン」を発表しました。50周年ビジョンでは、人づくり、街づくり、組織づくりという三つの面から、つくば青年会議所が次の50年目へ進むための目標(ビジョン)と行動指針を掲げています。単年度制という仕組みを採る青年会議所において、10年という長期的視野に立つビジョンを策定することは、明確な目的へ進むための道しるべとなります。諸先輩方から受け継いだ熱い想いをさらに大きく燃やし、次の世代へつなげるよう、2023年の運動に全力で取り組んでいきましょう。

つくばの未来を創る仲間の拡大、交流、そして発展・成長の機会の提供

 明るい豊かな社会を実現するためには、運動を共にする仲間が必要です。一人ではできないことも仲間がいれば達成できます。会員の拡大は、青年会議所の運動をするための源であり、大きくそして強く運動を進めていくための動力となります。また、今後加入するメンバーから見れば、青年会議所に入会することは、同じ志を持つ仲間との出会い、飛躍的な成長のきっかけを約束するものであると確信しています。近年会員数の減少傾向が進んでいますが、この街には青年会議所を知らない青年や入会を迷っている青年がまだまだいます。力を合わせて会員拡大に取り組んでいきましょう。
 青年会議所の強みは、同じ志を持つ仲間が、街を良くしたいという大きな目的に向かって、団結をして運動を進めていくことにあります。団結をするためには、常日頃からの交流が欠かせません。交流とは、いわば仲間と同じ時間を共有することです。同じ時間を共有する中で、互いに未来を語り合うこともあるでしょう。時に議論を交わすこともあるでしょう。苦労を共にすることもあるかもしれません。かけがえのない時間を仲間と過ごす中で、人は新たな気付きを得たり、大いなる成長をしたり、時には自分の新たな一面に出会えると考えます。交流は団結を生み、団結は運動を作り、運動は未来を育てます。運動を強く進めるため、メンバー間の交流に取り組んでいきましょう。
 青年会議所は、青年が社会により良い変化をもたらすための発展と成長の機会を提供することを使命としています。40歳までという年齢制限を設け、毎年違う役職・役割を担う仕組みを採っていますが、限られた時間の中で、地域の課題を解決するための事業を練り上げ、地域のパートナーとのつながりを築き、仲間と共に事業を構築するという経験を通じて、飛躍的な成長を遂げることができます。近年青年会議所に入会して卒業するまでの年数が短くなる傾向にあります。そのうえ、メンバーの4割近くが入会3年未満となっています。そのため、入会して間もないアカデミーメンバーを中心に、限られた短い時間の中で、組織として発展と成長の機会を自覚的に提供しなければなりません。メンバーが能力を向上させ精神的に成長することは、社会により良い変化をもたらすための第一歩です。飛躍的に成長する機会の提供に取り組んでいきます。

未来への希望溢れる茨城ブロック大会の実現

 本年つくば青年会議所は、茨城ブロック大会を主管します。茨城ブロック大会主管は、2013年以来となりますが、約10年という月日は、社会のありようを大きく変えました。世界に目を向けると、2020年に発生した新型コロナウイルス感染症の流行により、各国で市民の移動に制限がかかるなど、人と人との交流に影響を与えました。また、2022年2月から始まったロシアによるウクライナ侵攻は、深刻な人道危機を招いたのみならず、各国の経済成長にも悪影響を与えています。一方で、私たちの身近な生活に目を向けると、情報通信技術(ICT)が社会・経済活動の様々な分野に浸透しています。シェアリングエコノミーの進展、動画配信サービスの普及と情報発信主体の多様化、AIの利活用、オンライン授業やオンライン診断など非接触・非対面での生活様式の実現など、ICTが教育、医療、労働などを含むあらゆる社会経済活動を支える重要な役割を果たすようになっています。このように社会が常に変化をし続けている時代において地域の青年にできることは、変化に流され受け身になるのではなく、むしろ社会課題に積極的に取り組み、自分たちの地域からプラスの変化を巻き起こしていくことだと考えます。茨城ブロック大会が未来社会の先取りとなるような先進的な取り組みをうたっていることも時代の要請だと考えます。つくば青年会議所メンバーにとって、茨城ブロック大会という経験は、必ずや飛躍的な成長の機会になります。さらに、大会を通して構築された地域とのつながりは、つくば青年会議所のかけがえのない財産として残り、今後の街づくりの原動力となります。「スーパーシティ」の指定を受けているつくばの地から、行政、企業、市民の皆様、大会に参加する皆様と手を携えて、先進的・革新的な取り組みをもって地域の可能性を大きく押し広げていけるような、未来への希望が溢れる茨城ブロック大会を目指していきます。そして、茨城ブロック大会を主管する青年会議所として、一人ひとりが「おもてなしの心」を持って行動することで、茨城ブロック協議会の運動が最大限に発信できるようにしていきます。

地域の未来を切り拓く青少年の育成

 つくば青年会議所では、50周年ビジョンにおいて、「時代に必要とされる能力と精神を兼ね備えた人材の育成」という目標を定め、学生を対象としてビジネスに必要な知識やスキルを学べる場を提供し、次世代を担う人材の育成を行動指針に掲げています。テクノロジーの進化は目まぐるしく、短いスパンの中で、様々な価値観や社会の仕組み、世の中の動向が日々急激に変化しています。急激な変化は、これまで当然のように機能していた仕組みや、当たり前だと思っていた価値観でさえも不確実なものにしています。さらに、現代は、グローバル化の進展などにより、様々な活動において既存の枠組みを超えたり、多様性が進む中で、様々な要素・要因が絡み合い、複雑さを増しています。そして、これらの要素が組み合わさることにより、過去の成功例が通用しない曖昧性の高い世界を迎えています。このような時代において、自ら進むべき方向を探求する姿勢や自ら実現したいことを社会の中で実行する力が必要になっていきます。ビジネス、とりわけ起業家教育として、これらの探求する姿勢や実行する力を学ぶことは、未来の起業家を育てるだけではなく、変動的で不確実、複雑であり曖昧な時代を生きる全ての人にとっても必要なことです。そして、青年会議所は、地域の課題解決に取り組む多くの青年経済人で構成されています。青年会議所だからこそビジネス的思考法で社会課題に取り組む教育の機会を提供することが可能だと考えます。社会課題の解決を目指せる起業家教育に取り組んでいきましょう。

街を豊かにし、人のつながりを深める地域事業の展開

 青年会議所は、「明るい豊かな社会」の実現を目指しています。明るい豊かな社会を実現することの意味は、時代により変化をしていますが、現代においては少なくとも「持続可能な地域を創ること」がその一つに挙げられます。しかし、この不確実な時代において、持続可能とは、ただ前例踏襲を続けることではありません。その時代その時代に立ち現れる課題をとらえ、将来に向かっての新しい可能性を創り出し、街を豊かにする運動をしなければなりません。そして、人は、一人だけで生きていくことができないからこそ、他人との間で社会という枠組みを構成し、持続可能性を高めてきました。明るい豊かな社会実現のためには、地域内の人と人とのつながりを深めることが重要です。街を豊かにし、人のつながりを深める地域事業を展開していきます。
 「The 祭 in TSUKUBA」ねぶたパレードは、つくばの街並みが変わる中においても、常に街の象徴として、夏の夜空に輝きを与え、参加する人も見る人も笑顔にし、地域に賑わいを届けてきました。しかし、感染症の流行により、2020年と2021年は、開催中止を余儀なくされました。昨年は、まつりつくばは中止となりましたが、青年会議所の事業として、多くの皆様にご協力をいただき3年ぶりにねぶたパレードを開催することができました。私たちは、当たり前に開催することが難しくなっている今、街の人がねぶたパレードに何を求め、私たちがねぶたパレードを通じて何を提供できるのかを考えて、事業を構築しなければなりません。ねぶたパレードを実施するためには、多くの人手と時間と地域の皆様の有形無形のご協力が欠かせません。そして苦労を重ねた末に完成したねぶたが魅せる華やかで勇壮な行進は、参加する人も見る人も笑顔にし、街の人の心を明るくし、街を豊かにします。夏の風物詩であるねぶたパレードを開催することは、コロナ禍という非日常において、コロナ以前の日常を取り戻すきっかけになると考えます。本年度もねぶたパレードの開催までに困難は尽きませんが、行政を含めた関係諸団体と協議を重ね、つくば梟乃會、諸先輩方とも連携をして、ねぶたパレードを通じて街に日常を取り戻せるよう行動していきます。
 つくば青年会議所では、50周年ビジョンにおいて、「住みやすい環境と誰もが活躍できる可能性に飛び込めるステージをつくば全土へ」という目標を定め、将来的なナショナルトレーニングセンターに準ずる競技場設置の提言を行動指針に掲げています。目標達成のためには、まずはスポーツを振興して気運を高めなければなりません。つくば市の調査によると、つくば市はスポーツを行う市民の割合が多い一方、週3回以上のスポーツ実施率が、全国平均よりも低く、特に女性の週3回以上のスポーツ実施率は茨城県全体よりも低いなどと分析されています。スポーツをすることは心身の健康を高め、時にスポーツを通じた人と人との交流を深め、地域に活力を与えます。誰もがスポーツに興じることができる環境を整えることで、持続可能な地域を創る礎を築きましょう。
 私たちつくば青年会議所は、つくば市きれいなまちづくり実行委員会と連携し環境美化運動を実施してまいりました。環境問題は、持続可能な地域を創るうえで避けて通ることはできません。ごみを拾う、落書きをなくすなどの活動は、街の景観を改善し、参加する人のマインドを良い方向に変化する効果がありますが、それだけでは足りません。長期的な視野に立って、地域の人が環境問題に継続的に取り組んでいけるような仕組み作りが必要です。ニュースなどで取り上げられる環境問題に興味を示したり、自分の生活と環境問題が関係していると考えている人は多いものの、そこからさらに一歩進めて実践や行動にまでは結びついてはいないという分析もあります。環境問題への興味・関心を高めるだけではなく、問題解決に向けた実践や行動に結びつけることで、持続する仕組みを作っていくことができます。特に次世代を担う若者が環境問題に対して実践・行動に取り組むことは、長い目で見て環境問題への関与を継続させることが期待できます。若者が環境問題解決の実践・行動に取り組める仕組みを構築していきましょう。

会員に飛躍的成長の基盤を提供し組織力を向上させる組織運営

 つくば青年会議所は地域を明るく豊かな社会にするための運動を展開しています。その運動を進めるために欠かせないのが、強固な組織運営です。メンバーが飛躍的成長を目指し、地域を巻き込む運動をするにあたって、足元の組織がおぼつかなくては満足な結果を出すことはできません。そのため、一人ひとりのメンバーが輝くことのできる組織運営を目指します。
 財務面においては、定期的に財務運営会議を開催し、会計の適正運用、費用対効果や社会の利益にかなっているかの審査を行います。会計のしっかりした事業を行うことで、適切な事業移管も可能となり、地域からの信頼も高めることができます。
 広報面においては、ホームページや各種SNSを活用し、私たちの運動展開を地域の皆様に発信していきます。発信をするにあたっては、漫然と情報を流すのではなく意識的なブランディングが必要です。各メディアの特性に応じて、運動を伝えたい相手を意識した広報を行っていきます。また、つくば青年会議所はLOMの垣根を越えて多くのメンバーが出向先で活躍し、飛躍的な成長を遂げています。出向者を応援し、活動を支援するためにも、各種大会・諸会議での参加推進に努めていきます。
 つくば青年会議所は、2011年の東日本大震災、2012年の竜巻被害などを契機として、地域行政や関係諸団体の皆様と災害時における支援活動に関する協定を結び、連携を進めてきました。昨今、大規模な自然災害が毎年日本国内で起こっている中で、平時から強固な組織運営を心がけ、関係する団体と連携を図っておくことは、災害の時に真価を発揮します。常日頃から災害を想定して備えをしていきます。

結びに

 青年会議所の運動には常に成長のきっかけが用意されています。時に自分の限界以上を求められることもあります。限界を突破するために、自分自身と向き合い自分が無意識に作っている壁を乗り越えなくてはいけないこともあります。地域をさらに良くしたいと思って運動を進めようとするあなたの目の前に壁はいつでも立ちはだかります。一人で乗り越えられる壁もあれば、仲間と力を合わせてようやく乗り越えられる壁もあります。壁を乗り越えた先にどのような景色が見えるかは分かりませんが、素晴らしい景色であると信じています。
 あなたが動けば、きっと飛躍的な成長を遂げることができます。様々な可能性を持った仲間と出会い団結することができます。未来への希望溢れる街を創ることも夢ではありません。つくば青年会議所はあなたに可能性を飛び越える力をプラスします。共に最初の一歩を踏み出していきましょう。

一般社団法人つくば青年会議所 
第41代理事長 宮本 純